法令のハテナ
事業者や労働者等の責務について
受動喫煙防止措置の努力について
特別安全衛生改善計画制度について
外国に立地する検査機関の登録について
法第88条第1項の届出廃止について
電動ファン付き呼吸用保護具型式検定について
労働安全衛生法の概要
厚生労働省の管轄で職場における労働者の安全と健康を守るための法律です。
快適な職場環境作りを促進する事を目的に労働災害防止のための危害防止基準の確立や、責任体制の明確化、 自主的活動の促進の措置を講ずる等の対策を行う事が義務付けられています。この労働安全衛生法で指定された通知対象物質を提供する場合に、SDS(安全データシート)の提供が義務付けられています。
SDSとは何ですか
正式にはSafety Data Sheet(安全データシート)と言い、物質の性状や取り扱いに関する情報を記載したものです。
- 毒物及び劇物取締法に指定されている毒物劇物
- 労働安全衛生法で指定されている通知対象物質
- PRTR法の指定化学物質
これらを販売や譲渡する際にSDS(安全データシート)の提供が義務付けられています。
事業者や労働者等の責務
事業者及び労働者はそれぞれ、下記のような責務を果たさなければなりません。
事業者
この法律で定められている基準を最低限守るだけでなく、快適な職場環境の実現、労働条件の改善を通じて労働者の安全と健康を確保することに努めなければなりません。
また、事業者は国が実施する労働災害防止に関する施策に協力しなければなりません。
機械・器具その他の設備、原材料、建設物を設計、製造、建設または輸入する者
これらの機械・器具設備、製品、建造物などが使用されることにおいて労働災害発生防止に努めなければなりません。
建設工事の注文者など仕事を他人に請け負わせる者
施工方法、工期等について、安全で衛生的な作業が行えるように配慮しなければなりません。
労働者
労働災害防止のために必要な事項を守り、事業者やその他の関係者が実施する労働災害防止に関する措置に協力するように努めなければなりません。
安全衛生の管理
事業者は、政令で定められた規模の事業所ごとに「総括安全衛生管理者」を選任しなければなりません。「総括安全衛生管理者」は安全管理者、衛生管理者または『第25条の2第2項』の規定により技術的事項を管理する者の指揮をするとともに、次の業務を統括管理しなければなりません。
- 労働者の危険又は健康障害を防止する為の措置に関すること
- 労働者の安全又は衛生のための教育実施に関すること
- 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること
- 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること
- 前各号に掲げるもの以外の労働災害を防止するため必要な業務で、厚生労働省で定めるもの
「総括安全衛生管理者」は、当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者でなければなりません。また、都道府県労働局長は、労働災害を防止するために必要があると認めるときは、総括安全衛生管理者の業務執行について事業者に勧告することができます。
安全管理者の選任
事業者は政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから厚生労働省令の定めに基づき、「安全管理者」を選任しなければなりません。
また、労働災害を防止するため必要があると認められるときは、「労働基準監督署長」によって安全管理者の増員又は解任を命じられることがあります。
下記の業種と規模に該当する事業場については、少なくとも1人安全管理者を選任しなければなりません。
労働者数 | 業種 |
---|---|
50人以上 | 電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備及び機械修理業 |
300人以上 | 建設業、有機化学工業製品製造業、石油製品製造業 |
500人以上 | 無機化学工業製品製造業、化学肥料製造業、道路貨物運送業、港湾運送業 |
1,000人以上 | 紙・パルプ製造業、鉄鋼業、造船業 |
安全管理者の職務
安全管理者は、下記のように業務の安全に係る事項を管理しなければなりません。
- 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
建設物、設備、作業場所、または作業方法に危険がある場合の応急措置や適当な防止措置
安全装置や保護具、その他危険防止のために必要な設備、器具の定期的点検
作業主任者その他安全に関する補助者の監督 - 労働者の安全又は衛生のための教育実施に関すること。
安全に作業するための教育及び訓練
安全に関する資料の作成、収集及び重要事項の記録 - 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。
健康診断の実施 - 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
発生した災害原因の調査及び対策の検討
消防及び避難の訓練 - 前各号に掲げるもの以外の労働災害を防止するため必要な業務で、厚生労働省令で定めるもの
衛生管理者の選任
事業者は政令で定められる規模の事業所ごとに「衛生管理者」を選任しなければなりません。「衛生管理者」は都道府県労働局長の免許を受けた者や厚生労働省令で定められた資格を有する者のうちから厚生労働省令の定めに基づき選任します。
常時50人以上の労働者がいる一定の事業場においては選任が義務付けられています。また、常時10人以上50人未満の労働者がいる事業場においては、「安全衛生推進者」もしくは「衛生推進者」の選任が必要です。
衛生管理者の職務
衛生管理者は、下記のように業務の衛生に係る事項を管理しなければなりません。少なくとも週に1度は作業場を見回り、設備や作業方法、衛生状態に有害の危険性がある場合は直ちに、必要な措置を講じなければなりません。
- 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
健康に異常のある者の発見及び措置
作業環境の衛生上の調査 - 労働者の安全又は衛生のための教育実施に関すること。
衛生教育、健康相談その他労働者の健康保持に必要な事項
衛生日誌の記載等職務上の記録の整備 - 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。
作業条件、施設等の衛生上の改善 - 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備
労働者の負傷及び疾病、それによる死亡、欠勤及び移動に関する統計の作成 - 前各号に掲げるもの以外の労働災害を防止するため必要な業務で、厚生労働省令で定めるもの
産業医の選任
事業者は政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令の定めに基づいて医師のなかから産業医を選任しなければなりません。産業医は労働者の健康管理等を行うのに必要な医学知識について厚生労働省令で定められた要件を備えた者で、常時50人以上の労働者がいる事業場は1人以上、常時3,000人以上の労働者がいる事業場は2人以上の産業医を選任しなければなりません。
また、産業医が設置されていない規模の事業所については労働者の健康管理等を行うのに必要な医学知識を有する医師、もしくはその他厚生労働省令で定める者に労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるように努めなければなりません。
産業医の職務
産業医は労働者の健康管理、その他の厚生労働省令で定められた事項を行わなければなりません。労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは事業者に対し、健康管理等について必要な勧告をすることができます。勧告を受けた事業者はこれを尊重しなければなりません。
リスクアセスメントの概要
リスクアセスメントとは、化学物質やその製剤が持つ危険性や有害性を特定し、労働者に危険または健康障害を及ぼすおそれの程度を見積り、リスクの低減対策を検討することを言います。これまで、労働安全衛生法第 28 条の 2 の規定により「努力義務」とされていたものが、新たに「義務」となりました。
一定の危険性・有害性が確認されている化学物質(640物質)について、
- 事業所におけるリスクアセスメント(危険性・有害性の調査)が義務づけられました。
- 譲渡提供時に容器などへのラベル表示が義務づけられました。
リスクアセスメントは平成28年6月1日改正となりました。
リスクアセスメントの対象となる事業者
対象となる化学物質の製造・取り扱いをする全ての事業所が対象となります。業種や事業所規模などの指定要件はありません。
リスクアセスメント実施義務の対象物質
安全データシート(SDS)の交付義務対象である640物質が対象となります。
640物質はこちらのサイトにて公開されています。
【安全データシート(SDS)の交付義務対象640物質】
「厚生労働省提供対象物質一覧」へリンク。
リスクアセスメントの実施時期
平成28年6月1日以降、下記のような場合にリスクアセスメント実施義務(努力義務)が定められています。
- <法律上の実施義務>
- 対象物質を原材料などに新規採用もしくは変更する場合。
- 対象物質の製造または取り扱い業務において作業方法や手順を新規に採用したり、変更する場合。
- 対象物質の危険性や有害性などに関して、変化が生じた、もしくは生じる恐れがある場合。
※また、新たな危険有害性の情報が、SDSなどにより提供された場合など
- <指針による努力義務>
- 労働災害発生時に過去のリスクアセスメント結果に問題がある場合。
- 過去のリスクアセスメント実施以降、機械設備などの経年劣化や労働者の入れ替わりなどに伴う知識経験などの状況に変化があった場合。
- 施行日以前から取り扱っている物質を、施行日以降作業方法に変更がなくとも、過去にリスクアセスメントを実施したことがない、または実施結果が確認できない場合。
リスクアセスメント実施の流れ
リスクアセスメントは下記のような手順で進めます。
ストレスチェックの概要
ストレスチェックを行うことで、自身のストレス状態を知り、ストレスをためすぎないように対処したり、ストレスが高い状態の場合は医師などの面接指導を受け、必要に応じ仕事量の調整や職場環境の改善を行い、「うつ」などのメンタルヘルス不調を未然に防止するための仕組みです。
ストレスチェックの対象となる事業者
労働安全衛生法の改定により、常時50人以上の労働者がいる事業所では全ての労働者へストレスチェックを実施することが義務付けられました。
※契約期間が1年未満の労働者や、労働時間が通常の所定労働時間の4分の3未満の短時間労働者は対象外となります。
ストレスチェックの実施義務
労働者の心理的負担の程度を把握するために医師・保健師など※1による検査(ストレスチェック)※2を実施することが事業者の義務となります。
検査結果は、検査を実施した医師・保健師から直接本人に通知され、本人の同意なく事業者に提供することは禁止されます。
検査結果が一定の要件※3に該当する労働者から申出があった場合、医師による面接指導を実施することが事業者の義務となります。また、申出を理由とする不利益な対応は禁止されます。
面接指導の結果に基づき、医師の意見を聴き、必要に応じ就業上の措置※4を講じることが事業者の義務となります。
※1ストレスチェックの実施者は、今後省令で定める予定で、医師、保健師のほか、一定の研修を受けた看護師、精神保健福祉士を含める予定。
※2検査項目は、「職業性ストレス簡易調査票」(57項目による検査)を参考とし、今後標準的な項目を示す予定。検査の頻度は、今後省令で定める予定で、1年ごとに1回とすることを想定。
※3要件は今後省令で定める予定で、高ストレスと判定された者などを含める予定。
※4 就業上の措置とは、労働者の実情を考慮し、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などの措置を行うこと。
ストレスチェックの実施頻度
平成27年12月以降、毎年1回の実施が義務付けられています。ストレスチェックと面接指導の実施状況は毎年、労働基準監督署に所定の様式で報告する必要があります。平成27年12月1日から平成28年11月30日までの間に、全ての労働者に対して1回目のストレスチェックが求められております。
ストレスチェック実施の注意点
- ○プライバシーの保護
- ストレスチェック制度に関する労働者の秘密を事業者が不正に入手してはなりません。
- ストレスチェックや面接指導で個人情報を取り扱った者(実施者とその補助をする実施事務従事者)には、法律で守秘義務が課され、違反した場合は刑罰の対象となります。
- 事業者に提供されたストレスチェック結果や面接指導結果などの個人情報は、適切に管理し、社内共有時には、必要最小限の範囲にとどめる必要があります。
- ○不利益取り扱いの防止
- ①事業者が次のことを理由に労働者に対して不利益な取り扱いを行うことは禁止されています。
- 医師による面接指導を受けたい旨の申出を行ったこと
- ストレスチェックを受けないこと
- ストレスチェック結果の事業者への提供に同意しないこと
- 医師による面接指導の申出を行わないこと ②面接指導の結果を理由に解雇、雇い止め、退職勧奨、不当な動機・目的による配置転換・職位の変更などを行うことは禁止されています。
受動喫煙防止措置の努力義務
室内、またはこれに準ずる環境下で労働者の受動喫煙を防止するため、事業者および事業場の実情に応じ適切な処理を講じることが事業者の努力義務となりました。
例として全面禁煙、喫煙室の設置による空間分煙、たばこの煙を十分に低減できる換気扇の設置などがあります。
中小企業事業主が喫煙室などを設置する場合、費用の1/2の助成(上限200万円)を受けることができます。
特別安全衛生改善計画制度
重大な労働災害を繰り返す企業に対し、厚生労働大臣が指示・勧告・公表を行う制度が導入されました。
重大な労働災害とは、死亡災害や障害等級第1級~第7級に相当する労働災害を繰り返す企業であり、これに対して厚生労働大臣は「特別安全衛生改善計画」の作成を指示することができるようになりました。計画の作成指示に従わない場合、もしくは計画を守っていない場合などは厚生労働大臣から必要な措置をとるべきことが勧告されます。勧告に従わない場合はその旨を公表される場合があります。
外国に立地する検査機関の登録
ボイラーなどの特に危険な機械を製造等する際に受けなければならないこととされている検査・検定を行う機関について、従来は日本国内の機関による検査・検定以外に選択肢はありませんでしたが、今後は日本国内の機関による検査・検定のほか、外国立地機関による検査・検定も選ぶことができるようになります。
また、登録を受けた外国立地機関の検査および検定を受けた機械などは、日本国内で改めて検査・検定を受ける必要はありません。※
※労働基準監督署が実施する“落成検査”は引き続き受ける必要があります。
法第88条第1項の届出廃止
規模の大きな工場などで建設物、機械などの設置、移転などを行う場合の事前届出が廃止されます。
機械などの事前届出規制(現行) | 機械などの事前届出規制(見直し後) | |
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①規模の大きい工場などで生産ラインなどを新設・変更する場合は事前届出が必要 | → | 廃止 |
②危険な機械などを設置・移転などする場合は事前届出が必要 | 変更なし | ②危険な機械などを設置・移転などする場合は事前届出が必要 |
③大規模建設工事は事前届出が必要 | ③大規模建設工事は事前届出が必要 | |
④一定規模以上の建設工事は事前届出が必要 | ④一定規模以上の建設工事は事前届出が必要 |
電動ファン付き呼吸用保護具型式検定
- 電動ファン付き呼吸用保護具を譲渡、貸与または設置する際は、厚生労働大臣が定める規格または安全装置を十分に備えなければならなくなります。
- 電動ファン付き呼吸用保護具を製造または輸入する際は、厚生労働大臣の登録を受けた者が行う型式についての検定(型式検定)を受けなければならくなります。
- 電動ファン付き呼吸用保護具の型式検定を行おうとして登録の申請をした者について、厚生労働大臣が必ず登録をしなければならないものとされるための要件の一つとして、下記の項目が規定されました。
登録申請者が型式検定を行う際、下記の設備を用いて実施することが規定されることとなりました。
材料試験機 | ガス濃度計測器 | 内圧試験装置 |
通気抵抗試験装置 | 粉じん捕集効率測定装置 | 排気弁気密試験装置 |
濡れ率試験装置 | 最低必要風量試験装置 | 公称稼働時間試験装置および騒音計 |